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株式会社三技協 代表取締役 仙石通泰氏 “情報の海”が実現したオプティマイゼーション経営

 

会社の名前を聞いてピンとくる人はそうそう多くあるまい。経済産業省の「IT経営百選」に選ばれた通信ネットワーク構築会社だ。資本金は約3億円、従業員数は910人、2007年度売上高は117億円の典型的な中小企業。たまたま「21世紀型情報システムのあり方を考える」研究会で知り合ったのをきっかけに、仙石道泰氏に会いに行った。聞くと見るとは大違い、いやいや小粒でもピリリと辛い山椒のようなIT先進企業があるんですね。

株式会社三技協 設立:1965年4月1日/資本金:2億9,660万円/本社所在地:神奈川県横浜市都筑区池辺町4509/関連会社:5社(うち1社は中国・上海)/従業員数:連結910人(単独約200人)/年間売上高:連結117億円/主要業務:情報通信ネットワークの構築・保守、セキュリティ関連製品の開発・販売。

仙石通泰氏は1967年慶大卒、ソニーコーポレーションアメリカ社勤務を経てソニープラザ取締役。1990年三技協に入り92年代表取締役社長。神奈川県経済同友会常任幹事・情報通信委員長などを兼務。

 ――「21世紀型情報システムのあり方を考える」研究会で、山田さん(博英氏:アールワークス監査役)が〔情報の海〕という概念を提唱されている。私も『IT記者会Report』で「情報の海~ERPの概念・現在そして将来~」という連載をスタートした。タイトルもテーマも全くのパクリなんだけれど、コラボレーションというか、今日的な重要なテーマというか、そういう認識で、アトリスの安光さん(正則氏)とか関係者にインタビューをしているわけです。で、仙石さんとは第2回目の研究会でお会いして、私が「組織と機能」のことを指摘したら、仙石さんが「そんなことは当社ではとっくにやっている」と。これは面白そうだと思ったら、『社員の「1行報告」が会社を変える~「見える化」のオプティマイゼーション経営~』(=下写真=かんき出版、四六版190ページ、1,400円)という本を送っていただいた。それを読んだら、「これは本物だ」と思った。で、事務局の臼井さんからインタビューへの対応をお願いしたわけです。

仙石 佃さんが指摘した「組織と機能」論ね。あれは情報システムのあるべき姿について、本質を突いている。組織としての機能を具現化した情報システムから、機能としての組織を指向する情報システムに転換しなければならない、というのは、実感としてよく分かる。

 ――そのときのお話では、SAPのR/3を導入して「情報の海」を実現したということでした。失礼ながら、年商100億円ちょっとでR/3というのは、思い切った投資だと思いますけど。

   楽しくなければ面白くない

仙石
 R/3は、まぁ道具というか器というかね。その話はあとでするけれど、私はITには全くの素人で、それと、この17年のうち、最初の4、5年は会社の改革がテーマだった。「楽しくなければ面白くない、面白くなければ楽しくない」というのがモットーでね。そういう会社にすることばっかり考えてやってきた。だから難しく考えてITをどうするこうするということじゃなかった。

 ――面白そうだと思ったら本気で取り組む。本気で取り組むと面白くなってくる。

仙石
 そういうと難しくなっちゃう。私はもっと分かりやすい形でそれを表わしている。一例をあげると、年に1回、「サンフェスタ」っていう全員参加のイベントをやっていましてね。社員だけじゃなくて家族も呼んで、美味しいものを食べて楽しく過ごす。グーグルほどじゃないけれど、そういう環境を作りたいわけ。
 ――慰安会というか、昔でいうと社員旅行みたいな?
仙石 最初はそうだった。でも、社員旅行って、義理で参加する人もいるでしょ? 行き先も宿も旅行会社にお任せで、言われたままにバスに乗って……。そうすると、せっかくの休みを、何で会社のために使わなきゃならないんだ、って。そう思ったら楽しくないじゃないですか。そこでね、どうしたら楽しくなるかを考えた。ピノキオの話があるでしょ?

 ――木でできた人形のピノキオがいろんな冒険をする話?

仙石 そう。あの話の中に子どもの楽園みたいな話があって、そこでは毎日、美味しいお菓子が食べ放題で、いろんな楽しい遊びやイベントがあって、ワイワイガヤガヤやっている。そういうお伽の国みたいな時間が1年に1回ぐらいあったっていい。お金は会社で持って、社員が企画を立てて、どっかのイベント会社に頼んだりしないで、運営まで全部自分たちでやる。サンフェスタの企画・運営も仕事の一つみたいなんだけれど、そういう仕事は皆んなが面白がる。今度は会場をどこにしようか、金魚すくいとマジックショウを入れて、社長にどんな格好をさせようか、なんてことを企画する。面白いから楽しい、楽しいから面白い。
 ――それは面白そうだ。仕事だと思うと嫌だなって思うけど、自分のアイデアが実現するんですのんね。その発想はどこからきているんですか?

グーグルはピノキオか?

仙石 もう40年も前ですけど、私はアメリカの西海岸に留学してましてね。1960年代、お金がなかったから休みになるといまのシリコンバレーの農園でアルバイトをやった。

 ――当時は一面の果樹園ですよね。まだインテルもなかったかな?

仙石 葡萄とプラムとサクランボ。花が咲くとそりゃきれいでね。その中にちょこちょこっと米軍の施設がある程度。南の端っこにフェアチャイルドの工場があるくらいだった。仕事が終わると農園の経営者が家に呼んでくれて、自家製のワインをふるまってくれて、バーベキューをしてくれた。そのとき、仕事っていうのは楽しくなくちゃいけない、面白くなきゃ仕事じゃない、って思った。

―それを三技協でも実践しているわけだ。


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