新井信弘氏②
きっかけはサブシステム
新井 ですから、いきなりでしたよね。主要なベンダーさん4社、最後は5社に来てもらって、実際にシステムを使う原課の職員たちに見てもらって。ちょっとしたフェアみたいなものでしたよ。――その中にGCCは入っていたんですか?
新井 実は最初は入ってなかったんですね。ちょうど福祉システムが5年経っていて、そろそろ更新だったんです。その売り込みに来られたのが最初じゃなかったかな? 原課の職員には情報システムなんてどうだっていい、という人がある程度いる。福祉システムはその典型みたいなものなんですが、GCCさんにシステムのデモをしてもらったら、そういう職員が身を乗り出してくる。「こういうことはできますか」「これはどうですか」って、原課の人たちが勝手に盛り上がっちゃってる。
――それって、つまり従来のシステムに対する諦めみたいなものがった、っていうことですかね。どうせできやしないんだろう、って。
新井 福祉システムって、メインストリームじゃないですからね。いくらベンダーに言っても何もやってくれない。他を知らないんで、不平不満だけが溜まっちゃって、いつの間にか要求も口にしなくなっちゃていた。ところがアレもできる、コレもできるシステムを見ちゃったものだから、課員たちが当時の課長に「次はあのシステムになるんですね」って言うわけですよ。
――これはタダモノじゃないぞ、と思った?
新井 そんなに簡単にはいかないですよ。だって福祉はサブシステムですからね。こっちが検討しているのは基幹システムですから。GCCの営業の人が、「福祉と同じ設計思想で作っている基幹系システムが、もうすぐ出来上がる」って言うんですけど、システムを調達する立場ではリスクが大きいじゃないですか。
――それじゃGCCの他のシステムも見てみよう、とはならなかったんですね。
新井 デモを見ようと思ったって、まだ製品として完成してないんですから。でも設計思想を聞いて、そうしたら「共通スキーム」という概念には共感できた。それとすでに5社のシステムのデモを見てるじゃないですか。どれも帯に短し襷(たすき)に長しで、原課の職員の不満が吸収できない。だったら設計思想に共感できるGCCのシステムも候補の一つだよね、と思った。
――でも失敗するかもしれない。そうしたら新井さん、いまごろ北本市にいないですよね(笑)。
――じゃ、「e-Suite」ありきの調達だったんですか?
新井 民間企業ならそれでもいいんでしょうけど、役所はそうはいかない。全社から参考見積りを出してもらって、並行して現場の職員からどんな機能がほしいのかをリストアップしてもらった。
――2005年っていうと、市町村向けのC/S型窓口管理システムがオープン系、といっても要するにWindowsベースになって、一斉にWeb対応とかインターネットによる電子申請機能とかを装備し始めたときですね。それと平成の大合併があったから、各社ともユーザー獲得に必死だった。水面下でそうとう激しいバトルがあったんじゃないかな。
新井 各社とも、いわゆる「戦略価格」を提示してくるわけです。つまり価格はどっちにしても下がる。でも価格より機能じゃないですか。新システムにしたら、少なくともあと5年は不平・不満を溜め込むことになる。それはマズイんで、機能比較に軸足を置いた。原課の人には「いいとこ取りでいいから、ほしい機能を全部書き出してくれ」とお願いして、それまで文句ばっかり言ってた人たちの不満を要求というかたちで吸い上げて。そうしたら出るわ出るわ、1700項目ぐらいの要求が出てきた。
――1700ですか。でもそれが要求仕様書になる。不平・不満を逆手に取って要求仕様書を作っちゃったわけだ。
新井 全業務ですからね。ちょっと多いけれど、それを私たちが整理して、機能要件書にして各社に振って、標準機能で対応できるのか、カスタマイズか、対応付加かを回答してもらった。そのうえで我われだけで選ぶんじゃ不公平だし、また不平・不満の原因を作るようなものなんで、担当課長さんたちに集まってもらって選考委員会を作って、そこで評価してもらった。
――現場の人たちに要求を書かせたのがポイントですね。実際にシステムを使う人たちが「これはいいシステムだ」と言えばいいシステムなんですよ。そうはいってもまだ完成していないシステムに決めるんだから、勇気は要りましたよね。
新井 新しいものを取り込むときは勇気が要るものです。ただ面白いと思ってましたから。
――それって、つまり従来のシステムに対する諦めみたいなものがった、っていうことですかね。どうせできやしないんだろう、って。
新井 福祉システムって、メインストリームじゃないですからね。いくらベンダーに言っても何もやってくれない。他を知らないんで、不平不満だけが溜まっちゃって、いつの間にか要求も口にしなくなっちゃていた。ところがアレもできる、コレもできるシステムを見ちゃったものだから、課員たちが当時の課長に「次はあのシステムになるんですね」って言うわけですよ。
――これはタダモノじゃないぞ、と思った?
新井 そんなに簡単にはいかないですよ。だって福祉はサブシステムですからね。こっちが検討しているのは基幹システムですから。GCCの営業の人が、「福祉と同じ設計思想で作っている基幹系システムが、もうすぐ出来上がる」って言うんですけど、システムを調達する立場ではリスクが大きいじゃないですか。
――それじゃGCCの他のシステムも見てみよう、とはならなかったんですね。
新井 デモを見ようと思ったって、まだ製品として完成してないんですから。でも設計思想を聞いて、そうしたら「共通スキーム」という概念には共感できた。それとすでに5社のシステムのデモを見てるじゃないですか。どれも帯に短し襷(たすき)に長しで、原課の職員の不満が吸収できない。だったら設計思想に共感できるGCCのシステムも候補の一つだよね、と思った。
――でも失敗するかもしれない。そうしたら新井さん、いまごろ北本市にいないですよね(笑)。
不平・不満を逆手に取った
新井 システム監査で自分たちの仕事の仕方がマズイんだって、みんな痛いところを突かれたわけですよ。少しでも良くなるんなら、思い切ってやろうよ、という雰囲気があったんです。「やるか?」って聞いたら、「やるぞ」って、原課が後押ししてくれた。他社のシステムに入れ替えても不満が出ることは分かっていた。――じゃ、「e-Suite」ありきの調達だったんですか?
新井 民間企業ならそれでもいいんでしょうけど、役所はそうはいかない。全社から参考見積りを出してもらって、並行して現場の職員からどんな機能がほしいのかをリストアップしてもらった。
――2005年っていうと、市町村向けのC/S型窓口管理システムがオープン系、といっても要するにWindowsベースになって、一斉にWeb対応とかインターネットによる電子申請機能とかを装備し始めたときですね。それと平成の大合併があったから、各社ともユーザー獲得に必死だった。水面下でそうとう激しいバトルがあったんじゃないかな。
新井 各社とも、いわゆる「戦略価格」を提示してくるわけです。つまり価格はどっちにしても下がる。でも価格より機能じゃないですか。新システムにしたら、少なくともあと5年は不平・不満を溜め込むことになる。それはマズイんで、機能比較に軸足を置いた。原課の人には「いいとこ取りでいいから、ほしい機能を全部書き出してくれ」とお願いして、それまで文句ばっかり言ってた人たちの不満を要求というかたちで吸い上げて。そうしたら出るわ出るわ、1700項目ぐらいの要求が出てきた。
――1700ですか。でもそれが要求仕様書になる。不平・不満を逆手に取って要求仕様書を作っちゃったわけだ。
新井 全業務ですからね。ちょっと多いけれど、それを私たちが整理して、機能要件書にして各社に振って、標準機能で対応できるのか、カスタマイズか、対応付加かを回答してもらった。そのうえで我われだけで選ぶんじゃ不公平だし、また不平・不満の原因を作るようなものなんで、担当課長さんたちに集まってもらって選考委員会を作って、そこで評価してもらった。
――現場の人たちに要求を書かせたのがポイントですね。実際にシステムを使う人たちが「これはいいシステムだ」と言えばいいシステムなんですよ。そうはいってもまだ完成していないシステムに決めるんだから、勇気は要りましたよね。
新井 新しいものを取り込むときは勇気が要るものです。ただ面白いと思ってましたから。
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