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NPO法人情報技術取引所理事長 二上秀昭氏~ユーザーにアタック 多重構造をどうしますか?~③

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スキルギャップはなぜ起こる

 ――いま話に出たスキルギャップね。これもスキル表一枚ですよね。面接はするかもしれないけど、使ってみなけりゃ分からない。そういうトラブルは少なくないでしょ?
二上 多いよね。最近は代金のトラブルよりそっちの方が多いんじゃないですか? でもこれだって技術者の力量が要求に合ってるかどうかなんて、会社は分からないしね。
 ――社員の力量を会社が分からない、っていうことがおかしいじゃないですか。そういう場合、どっちが悪いの? ウソをついて技術者を出した方か、ウソを見抜けずに発注した方か。
二上 どっち、って? ウソのスキルを言った技術者がまず悪いんじゃない? ウソじゃなかったとしても、できないのに「できる」と言うのがおかしいよね。
 ――そうやって何でも技術者に責任を押し付けたって、何も解決しませんよ。見抜けなかった発注者がバカだった、っていうだけじゃないですか。違います?
二上 それが通れば苦労はないけど、結局は力関係でしょ。技術者の力量を見抜けなかったということで、発注者と受注者がお互いに損を折半で負担することになる。ウソをついた技術者はそれで終わり。そういうパターン。首になった技術者はまた別の会社にいって、そこでジャストフィットすればいい。
 ――スキルギャップって、なぜ起こるんですか?
二上 なぜ起こるか? そんなの考えたことなかったな。要するに発注者も受注者もいい加減なんだろうね。それでも何とかなってるから、なぜっていうことを考えない。面倒くさい。そういうことじゃないですか?
 ――じゃ、これを機会に考えてみましょうよ。なぜスキルギャップが起こるか。それを解決できるだけで、業界の風通しはかなりよくなるはずですよ。
二上 佃さんはどう考えるの? 質問ばっかりしないで、そろそろ答える側に回ってもいいじゃないですか。
 ――じゃ、言いますとね、よくスキルを測るメジャメントがない、っていうじゃないですか。だからITスキル標準だ、技術者資格だというんだけど、それはほとんど関係ない。発注者がどういうシステムを作るのか、どういうプロセスで作るのか、そのためには何が要るのかを理解できていないだけじゃないですか。だから「とりあえず」で人を集めて、使える人だけ残すという場当たり的、泥縄的な受発注になってしまう。
二上 発注者が悪い?
 ――基本はそうだと思います。発注者がバカだから受注する側もバカで済んじゃう。スキルギャップでお金を払う払わないという問題が発生したら、受注した側が開き直ればいいんです。それはアンタがアホだったんだ、って。
二上 じゃ、我われの味方なんですか? いつも我われに厳しいこと書いたり言ったりしてるじゃない。本当に悪い、というかこの業界の問題の元凶はコンピュータメーカーやNTTデータなんかの大手ですからね。彼らはソフト開発の実務なんかほとんどやらないで、利益だけしっかり取っている。我われだけ責めても原因がなくならない限りダメですよ。

野武士の矜持を持てないか

 ――二上さんが言う「我われ」って何ですか? ピンハネしている似非ソフト会社? それとも現場で汗を流してるソフト会社? 少なくとも似非ソフト会社の味方ではありませんね。ただ現場で汗を流してるソフト会社というかIT技術者派遣会社には、もっと矜持を持て、と言いたいですけど。だってJIETが会員1,300社っていったらJISA(情報サービス産業協会)のほぼ2倍。業界の事業者団体としては最大規模じゃないですか。素朴な疑問としてかねがねうかがおうと思っていたのは、それだけの会員を擁していながら、なぜメッセージを発信してこなかったのか、ということです。
二上 我われが何を言ったって、誰も相手にしてくれませんよ。経産省だってJISAだって「どうせ下請けの集まりでしょ」っていう扱いだもの。我われは所詮、言葉は悪いけれど、奴隷みたいなもんですよ。奴隷が反乱を起こしたら、潰されるのがオチだからね。
 ――いじけてたって何も始まらないでしょ。いじけてる仲間が集まってブツブツ文句を言い合ったって、何も生まれない。JISAの会員といったって、半分は親会社の顔色をうかがっている情報子会社。社長も社員もサラリーマンで、任期中を無難に過ごせればいい。殿様商売にアグラをかいている能無しの集まりだとタカを括っておけばいい。下請けなら下請けの誇りがあるじゃないですか。楠正成だって蜂須賀小六だって、野武士の大将だった。もっといえば、漢の武帝だって徳川家康だって元をたどればどこの馬の骨か分かりゃしない。
二上 何度かトライしたことはあるんですよ。でもね、現実に業界の大手から仕事をもらっているんだから、下手なことは言えない。例えば私は日本ブレーンという会社の経営者でもあるわけだから、メッセージの発信者はJIETでも、結果として会社に影響がくる。それでいつも理事会で「止めとこう」ということになっちゃう。

原発注価額の半分が消える

 ――話を変えますが、具体的な受注価格っていくらぐらい? 私が知っている範囲では、経験3年から5年のプログラマーだと人月55万円、よくて65万円ぐらいでしょ?
二上 それはどうかな。もっといい単価をもらっているケースもありますよ。反対に40万円台ということもある。結局は力関係ですよね。
 ――たしかに一律じゃないでしょうけど、JIETの会員が受ける仕事っていうのは、多重取引きの何番目ぐらいなんですか?2次っていうことはないよね。
二上 一概にはいえないでしょう? 地方の会員は地元企業の1次請けということもあるでしょうし。
 ――でもJIETを通じて成約する案件っていうのは、JIETに来るまでに何次か階層を経ているわけですよね?
二上 そういうことなら、JIETに来るまでに最低3階層は経ているんじゃないかな。ユーザーがいて、コンピュータ・メーカーとか大手SIerがいて、それぞれの子会社が入ってれば4次、5次、6次なんていうのはザラだよね。
 ――ユーザーの発注単価がその間にどれくらいピンハネされているんですか。原発注価額を100とすると、JIETの会員企業が受け取るのはどれくらい?
二上 元請けが受け取ってる契約額は100なんていうことはないですよ。120万とか150万とか、もっと高い。仮に100としたら元請で30から40は取るでしょ。先に利益を確保して、下請けを使おうとする。2次請けがそこから15ぐらい取って、3次請けでまた10から15減って。だからJIETの会員が受け取るのは50とかじゃないですか。
 ――ということは、仮にユーザーがプログラマー1人に月120万円払っているとすると、5次請けが受け取るのは60万円。半分は途中で消えちゃうんだ。
二上 あくまでも単純計算の話で、すべてとは言わない。だけど、そんなところじゃないかな。
 ――この景況を受けて、契約期間が残っているのにいきなり解約とか、月額の一律カットが起こってますよね。それって下請法違反じゃないんですか?
二上 そりゃ、違反といえば違反ですよ。でも派遣が真っ先に切られちゃうのって、現実には仕方がないじゃない。「いやならいいよ」と言われたら、我われは弱いよね。
 ――本当はさらに下があるんでしょ? 業務委託とか準委任とかの言い換えで、派遣の連鎖がある。その点はどうなんですか?

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