NPO法人情報技術取引所理事長 二上秀昭氏~ユーザーにアタック 多重構造をどうしますか?~②
――私もその考え方を支持します。実質的には何もしないで、名目だけの管理費を取るのは中間搾取そのものでね。そういうブローカー的な会社がソフト業を名乗ってるから腹が立つ。その意味でJIETは一定の役割を果たしたのは事実だと思います。ところで最近の状況に疎いんでうかがうんだけど、今、会員は何社?
少しでも有利な仕事がほしい
二上 3月末現在で約1,300社。そのうち半数が地方の会社ですね。毎年100社以上入会してきてる。ただね、この景気後退がどう影響するか、ちょっと読めない。これまでだと、仕事がなくなってくると会員が増えてたんだけど、今回はどうですかね。会員が減ると運営に支障が出る。今のところ、影響は出ていないけど。――仕事がいくらでもあればJIETの存在感が薄くなる。なくなると会員が増えるっていうのは、会の主旨と矛盾しませんか?
二上 どうして? 仕事がなくなるから会員になって仕事を探す。それでいいじゃない?
――だってJIETはただ単に仕事を探す、技術者を探す場じゃないんでしょ? 中間搾取を解消しよう、受発注を健全化しようというのが主旨なら、仕事があってもなくても会員が増え続けていておかしくない。
二上 佃さん、それは理屈。実際はみんな仕事がほしいから参加する。仕事がたくさんあったらあったで、少しでも有利な仕事を取りたい。有利っていうのは、結局はお金。受注金額が高いほうがいいに決まっている。
――そうなると階層構造の問題なんかどうだってよくなっちゃう。仕事さえあればいいんだから。
二上 JIETは仕事や技術者を斡旋する場じゃないんでね。仕事を出したい会社と受けたい会社が知り合う場を提供しているだけなんで、仕事のやり取りにJIETは関与しない。
――以前うかがった話では、JIETとして弁護士と顧問契約して、適正な取引きが守られなかった場合は仲裁に乗り出すんだ、ということでしたよね?
二上 そんな話、ありましたっけ? よく覚えてないな。
――代金の不払いを解決することができた、って話してたじゃないですか。今はやってないの?
二上 そういうことはやってないですね。取引きはあくまでも当事者間の取り決めでやってもらう。だから仮にトラブルが発生しても、それは当事者間で解決してもらう。いまやっているのは不正行為を起こした場合は除名する、ということかな。
――除名って、実際には年に何社ぐらい出るんですか?
二上 除名処分っていうのは、その会社にレッドカードを出すっていうことだからね。審判でもないJIETが退場を命じるのは慎重にならざるを得ない。理事会で決議できるのは「会則に著しく反した場合」に限られるから、年に1件あるかないか。
――会則に著しく反する、というのは例えばどんなケース? 「公序良俗に反する」とかいうわけじゃないでしょ?
“粗悪”を織込み済みの業界
二上 そりゃ、犯罪行為とか法律的な不祥事ならかえって話は簡単ですよ。最近の除名でいうと、当会(うち)とおんなじことを始めようとか、分派活動とか。何年か前、任意団体からNPO法人に移行するとき、脱藩活動というか分派活動というかがあって、それを首謀した人を除名した。でもそういうケースは滅多に起きないよね。――取引きを健全化するためという主旨に立ったら、契約違反を繰り返す会社はバンバン除名処分にして、要注意会社のリストを作ったらいいのに。JIETのホームページでも「“粗悪”な協力会社、技術者の排除に努める」って謳っているじゃないですか。多重取引きの監視機構のような役割もあるんじゃないですか?
二上 JIETとしてブラックリストを作ろうとしたことはあるんですよ。でも理事会で拒否されてしまった。各社がすでに独自のリストというか情報を持っているし、それは各社の判断に任せるべきだということになって。なかなか思うようにはいかないんだよね。
――たしかに「ブラックリスト」っていうと排斥の意味が強すぎるけど、取引きをする際、“前科”があるかないかは参考情報になる。
二上 ソフト業の場合はね、会社としての問題なのか、技術個人の問題なのかがはっきりしないんですよ。だって契約するのは会社だけど、トラブルを起こすのは主に現場の技術者ですからね。遅刻が多いなんていうのはマシなほうでね。急に出勤しなくなっちゃう、どこかにいなくなっちゃうんだから手に負えない。
――スキルギャップの問題は起こっていませんか?
二上 スキルが要求レベルと合わないっていうのは、スキルに対する発注者と受注者の解釈の相違っていうこともある。技術者を出す方は「大丈夫だ」と思って出すんだし、受け入れ側だって面接した上で発注している。だいたい発注者も、どういうレベルのスキルが必要かがよく分かってないんだよ。
――急に出勤しなくなったり、どこかにいなくなっちゃうのは技術者個人のモラルかもしれないけれど、会社にも社員教育の問題があるんじゃありません? そういう技術者を雇って、教育もしないで現場に出しちゃうから問題なんでね。
二上 採用するとき、そんなの分からないですよ。派遣する方も受け入れる方も分かりっこないですよ。だってスキル表一枚だもの。もともとソフト業っていうのは、そういうことを織り込み済みで動いているんじゃないですか? そうじゃないとソフト開発の仕事は回らない。
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