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J-SaaS「全国キャラバン」レポート ITに使われない方法~要点は顧客と社員の満足度~①

 

 「J-SaaS全国キャラバン」セミナーで筆者が司会進行を担当する(した)のは高松(4日)、大阪(6日)、札幌(9日)、名古屋(16日)、金沢(18日)、福岡(26日)の計6回。パネルディスカッションはともセミナーの最後(15:45~17:30)に設定されているため、「皆さん、残っていてくれるだろうか」「ちゃんと聴いてくれるだろうか」と内心ビクビクものだった。高松市でのパネルに出席したのは、筆者のほか、長尾和彦氏(㈱エイド社長)、奥谷義典氏(㈱ソレキア元高松支店長、現顧問)、古芝保治氏(枚岡合金工具㈱社長)の3氏。それぞれの立ち位置は、長尾氏がJ-SaaS普及指導員、塩谷氏がITベンダー、古芝氏がIT経営企業の代表ということになる。パネルはIT経営企業の事例紹介ということで、古芝氏から始まった。

(J-SaaSのサービスは2009年3月31日から始まっています。この記事は3月4日時点のものであることをご承知おきください)

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J-SaaSから離れて

 ――これからパネルディスカッションというわけですが、J-SaaSのサービスはまだ始まっていませんので、その事例というわけにも行きません。そこでここではJ-SaaSから離れて、中小企業におけるIT経営の視点から、事例を古芝さんにお話いただきたいと思います。で、会場の皆さんに古芝さんの会社が取り組んだIT改革を簡単に紹介しておきますと、といって私も枚岡合金工具のホームページをのぞいただけですので、間違っていたら訂正していただきたいのですが、金型の図面や見積書、企画書など紙の情報を電子化して、誰もでも素早く検索できるようにした。しかもそのシステムを「デジタルドルフォンズ」という製品にして販売もしている、と。概略はそういうことでいいでしょうか。
古芝 ザックリいえばそうですけど、それは結果でして。その前に枚岡合金工具は何をやっている会社かといいますと(プレゼン資料を映しながら)、ちょっと特殊な金属部品の金型とか平温の鉄を特殊な部品に加工して納めている。お取引先には愛知県の自動車メーカーさん、大阪の家電メーカーさん、そこまで言えば皆さん分かっていただけるでしょうけど、そういう会社がありまして……。
 ――今回の景気後退でたいへんかも知れませんけど、お客さんは一流企業じゃないですか。
古芝 それはいいことでもあるけれど、困ったことでもある。というのは、一流企業の要求に応えるには、当方の製品も一流じゃなければならないからなんです。ところがそうはいってもコッチは中小企業ですからね、大きな投資はできないし、大学の工学部卒のエンジニアを採用することもできない。そんなこんなで10年前、当社は業績が伸び悩みましてね。というより年商がピーク時の4分の1にまで落ちて、このままやったら会社がつぶれるかもしれん、というところまで追い込まれた。こりゃ何とかせんといかんと思ったわけです。私は二代目でしてね、今の政治家みたいに二代目になったらダメになったと言われんようにと思いまして(笑)。だから最初はITなんて考えていなかった。それより恥ずかしい仕事はしとうない、子どもや孫に胸張れる仕事をしよやないか、と。それを社員に訴えた。
 ――子どもや孫に胸を張れる仕事、なんてカッコいいじゃないですか。ところでどうして業績が落ちたんですか。よろしければ教えてください。

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職場の整理整頓から始めた

古芝 要するに仕事に対する姿勢がなってなかった。いいお客さんが付いていることにアグラをかいた。職場が雑然としていて、工具がどこに行ったか分からん。紙の図面はパンチで穴を開けて紐で綴じてあるんだけれど、探し出すのに時間がかかる。工具や図面を探すのにかかっている時間をお金に換算したナンボやろ、と考えたら、そや、整理整頓から始めんとイカンと。
 ――いまご紹介いただいた映像を見ると、工具を掛ける場所には工具の形が描かれていて、何が掛けられているべきかが一目で分かる。そこになければ誰かが使っているか、片付け忘れているわけだ。書類のバインダーは背表紙に赤い帯が斜めに付いていて、その線が揃うように差し込めば順番通りに並ぶ。見えるようにすることが整理整頓の第一歩だったんですね。
古芝 そりゃもう、全員が職人ですからね、「雑巾がけをするために何10年もここで仕事してるんとちゃうぞ」と猛烈な反発がありました。工具を片付けたり図面を探している時間があったら、一個でも製品を作れと。それがいい社員なんだと皆が考えていた。でもそれではイカンと。ISO9000の認証を取らんことには注文してもらえんことになる。山のようになっていゴミとかガラクタのようなものを片付けることからいこ、と。図面を確認しないで経験と勘でモノを作るものだから、どこかに間違いが出る。製品の精度が落ちて、お客様から注文が来なくなる。そういう悪循環だったんですね。それで、まず工具や機材をきちんと片付ける、机の引き出しをいつも整理しておくようにした。「きちんとしろ」と口で言うより、形で見せる。そうすると、いつの間にか職場がきちんと片付くんですね。
 ――私たちも同じように、床に落ちている小さなゴミに気づくか気づかないか、気づいて拾うか拾わないか。それがいいネタにつながると言われてます。と言ってる私の机はヒドイ状態になってますが(笑)
古芝 片付けるっていうのは、気づくということにつながるんです。何があるかは見れば分かるけど、何がないかに気がつかないと、いい仕事はできない。

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