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J-SaaS「全国キャラバン」レポート ITに使われない方法~要点は顧客と社員の満足度~②

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「時間」も経営資源の一つ

 ――映像を見ると、古芝さんの机の引き出し、すごいことになってますよね。収まる形にくり抜いたウレタンか何かの中に、電卓、ペン、定規などがきっちり入っている。古芝さんご自身、相当の几帳面というか片付け魔なんですかね? それとも社員に言った手前、自分もキチンとしないといけなくなった?

古芝 血液型がA型ですから(笑)。ま、血液型で何でも片付けてしまうのはどうかと思いますが、私だってズボラな面がある。社員に「きちんと片付けろ」と言った手前、自分がズボラでいるわけには行かなくなったというのが本当のところでして。でね、そうやっている間に考えたんですわ。当時、当社の売上高を社員の総就業時間で割ると、1時間6,000円でした。ということは1分100円。1枚の図面や書類を探すのに5分かかっていれば500円、10分なら1,000円。これを短縮すれば、それだけ利益が出る。
 ――経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」と言われます。枚方合金さんでは「時間」も経営資源なんですね。
古芝 時間は取り戻すことも貯めることもできない。「今」しかない。それで誰がやっても同じ繰り返しの仕事にはコンピュータを使うのがいちばんだなと考えて、システムを作った。
 ――どこか外部のソフト会社に頼んだ?
古芝 いえ。自分で作りました。日常業務をこなしながら、気がついたことを少しずつシステム化していった。ちょこっと改善ということで、「チョコ改善」と言ってるんですが。ITの専門会社に頼んだのは、ずっと後になってでした。
 ――自分で作る、って、社員の皆さん、そんなことができたの?

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きっかけはアラン・ケイ

古芝 いやいや、社員じゃなくて、作ったのは私。私は昔、パソコンが出始めたころ、富士通の9450というマシンで簡易言語を勉強しましてね。コンピュータメーカーからインストラクタになってくれ、と言われたこともあるんですよ。当社のERPシステムは私の手作り。
 ――あ、そりゃスゴイ。古芝さん、何がきっかけだったんですか?
古芝 1998年ですけど、Macワールドというイベントがありまして。
 ――米アップル社が毎年開いていたコンピュータのショウですね。
古芝 そう。そのMacワールドでアラン・ケイ博士の講演を聞いた。
 ――アラン・ケイさんですか。私も何回かお会いしたことがあります。ここにお越しの方はご存知とは思いますが、ノートブック・パソコンの原型というか概念を作った天才的なエンジニアですね。念のために申しえておきます。
古芝 そのときコンピュータというものに対する認識が180度変わった。コンピュータはビジネスのドライバだと。こりゃ、使わにゃ損だ、と。というんで自分でプログラムを作るようになったんですね。
 ――それって、横浜に本社がある三技協っていう会社の社長さんとよく似たような話ですが。
古芝 仙石さんね。よく知ってますよ。
 ――ITを上手に経営に生かしている会社に共通するのは、リーダーが興味を持って、勉強していることですね。ただ古芝さんはちょっとレベルが違うけれど。それと仙石さんは「IQの低い組織にITを導入すると、生産性はかえって落ちる」と仰っている。先ほどの整理整頓というのは、仙石さん流にいうと、「組織のIQレベルを上げる」につながっている、と思いますね。それで話を「時間」に戻しますが、分かりやすい尺度として、どれくらいのコスト削減につながったんですか?
古芝 コスト削減という認識はあまりないんですよ。むしろ「時間」を経営資源の評価軸にして、ビジネスチャンスを広げることに注力しているんですね。でも「時間」というのはコストとしてつかみにくい、というのは間違いです。当社でいうと、社員1人が1日1時間、タバコを吸ったり資料を探したりで何かしら無駄にしていると、1分100円ですから経営資源は6,000円のロスというわけです。6,000円×13人×年間280日とすると、1年で1,000万円以上の損失になっている。でもそれより重要なのは、ビジネスチャンスを逃さない、ということです。お客様から注文や問い合わせの電話が入ると、これまでだったら「あとでお返事します」って具合でしたけど、今はその場で図面や見積書がパソコンの画面に表示される。「おっ、枚岡さんはレスポンスが早いな」と、カッコよく言うたらサービスレベルというか顧客満足度が上がる。ありていに言うたら、お客さんがかけてきた電話で用件が終わるんで、電話代が安く済む(笑)。ま、それは半分冗談として、ビジネスチャンスを逃さずに済む。そうなると社員もどんどんやる気になる。社員が面白がってシステムを使うんですな。結果として売上げが上がる、利益も伸びる、と。
 ――それは別の機会に、ちゃんと取材したいお話ですね。ところで、奥谷さんにうかがいますけど、ITベンダーのお立場からすると、古芝さんのような経営者はやりにくい相手じゃないんですか? 自分でプログラムを作っちゃうし、主張があるし(笑)。

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