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J-SaaS「全国キャラバン」レポート ITに使われない方法~要点は顧客と社員の満足度~④

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何とかなるわけじゃない

 ――ITは万能じゃない、と。昔、「コンピュータが間違いまして」っていうと、たいがい許してくれた時代がありました。でもコンピュータは正しく間違うわけで、主体はヒトですもんね。

奥谷 コンピュータとかネットワークとかは道具に過ぎないんです。私どもシステム開発会社はITの専門ですけど、ユーザーさんの業務のことはあまり知らない。ですけど何となくシステム会社なんだから、何でも上手くやってくれるだろう、という錯覚がユーザーにある。そこでどうしても手段とか技術とかに目を奪われてしまう。何をするのか、何が目的なのかは、ユーザーが考えてくれないと困ったことになってしまうんですね。
 ――お言葉を返すようですが(笑)、ユーザーがしっかりすると、ITベンダーはいい加減な仕事ができなくなる。現在の収益構造からすると、今のままの方がいいんじゃないですか?
奥谷 そういうことで私どもが利益をあげる構造じゃダメなんですよ。ユーザーがしっかりしてくれて、我われITベンダーにもっと厳しい目が向けられる。そうなると我われの世界に競争が起こる。
 ――お二人のお話を聞いていて、J-SaaS普及指導員というお立場で、長尾さん、いかがですか?
長尾 奥谷さんはITコーディネータでもあり、先輩でもあるので、私があれこれ言うのも何ですが、お二人のお話に共通しているのは「本質を外さない」「本質からずれない」ということじゃないでしょうか。企業の本質っていうのは、顧客の満足、従業員の満足、そしてリーズナブルな利益。それと「ITありき」じゃないということですよね。そのときたいせつなのは、聞く耳を持っているかどうかだと思います。
 ――ガンコであれ、しかし頑なじゃダメよ、と。

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交換日記で情報を共有

長尾 古芝さんのお話にも奥谷さんのお話にも「すべての社員を巻き込む」ということが出てきました。認識を共有するといことですが、そういうとすぐグループウェアっていうことになるんですけど……。
 ――いや、私はツールの話をしてるんじゃなくて、共通の目的というかミッションというか、そのための情報共有ということなんですが。
長尾 ええ、ですからその話をしようと思って。
 ――あっ、どうもすみません。早とちりしました(笑)。
長尾 いえいえ。でね、生半可な知識があるとすぐグループウェアということになるんですけど、さて、本当にそうだろうか。私が経験した事例をお話しますとね、経営者と従業員の間で日記を交わしたというケースがあります。
 ――日記ですか? 交換日記っていうと女学生みたいな(笑)。めちゃくちゃアナログじゃないですか。
長尾 アナログですね。ま、毎日じゃないにしてもですね、ノートを作ってですね、社長と従業員が日記というかたちで意見を交換していく中で、課題を洗い出しながら意識レベルを合わせていったんですね。アナログだったからこそ上手くいったケースです。
 ――それだって立派な情報の共有ですよ。古芝さんの会社ではどうやって意識合わせをやったんですか。
古芝 意識合わせも何も、ジェットコースターのように業績が落ちましたからね。自分らにはこの道しかないやないか、と。子どもや孫に誇れるような仕事をしよやないか、と全員が決意しまして。
 ――血判状ですか。
古芝 そう、血判状。この難局を乗り切らなんだら、全員が食い扶持に困る。社長も社員もあらへん。やるっきゃない。
 ――危機感を共有するというのは、ものすごい原動力になりますね。そこに大石内蔵助がいて、堀部安兵衛がいて、そうやって大阪の片隅でミニ・プロジェクトXのような話が生まれたと。誰かが脚本を書けば一本の映画が出来上がる。
奥谷 そればっかりは、私どもシステムの受託開発会社にはどうしようもない。ただですね、全社一丸で業務改革に向かう体制ができていると、システム作りをする立場ではものすごくやりやすい。目的がはっきりしていれば開発側が何をすればいいかが分かる。そうすると手もどりが起きないので、納期通りにシステムを作ることができる。加えて経営者の熱い思いがあると、我われも感情がありますから「よし、やるぞ」っていう気になりますよね。私どもとしては納期までにシステムが完成して検収を受けることができて、予定通りの利益が出ればビジネスとして成功なんですけど、実はお客様から「ありがとう」とか「助かったよ」と言っていただいて、初めて成功なんですね。
古芝 奥谷さんの話に関連して、皆さんにこの絵を見てほしいんですけどね。
 ――おっ、どこかのメーカーのコマーシャルに出てくる「この木なんの木」みたいな。

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